長期投資研究ブログ~50年後の未来~

米国、日本株の注目企業分析、新テクノロジー分野の市場分析

ウェアハウス(倉庫)のシェアリングエコノミー、FLEXE(フレクゼ)を徹底検証してみた。

  1. 会社概要
  2. 事業内容とビジネスモデル
  3. 主要顧客と顧客特性
  4. 事業の特徴、他事業との差別化
  5. 競合分析
  6. 成功要因
  7. 国内の類似ビジネスモデル

1.会社概要

 

Flexe.Inc(フレクゼ)

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本社所在地:アメリカ合衆国ワシントン州シアトル

設立年:2013年 8月

CEO:Karl Siebrecht

従業員数:約78名

沿革:

2013年にCEOのカールが参加したとあるパーティーで、倉庫探しに苦労しているという友人の話をヒントにオンデマンド型のウェアハウス貸し出しサービスを思いつく。それまでは倉庫を借りるとなると5年間などという長期間での契約が主であったが、ある一定のスペースを借りたい期間だけ借りたいという需要を満足させるために当社を設立。当初はウェアハウス提供者と小売り業者をマッチングさせ、倉庫スペースを貸し出すのみの事業であったが、イーコマースサイト運営者向けに梱包などの発送準備、配送サービスも担うようになった。現在は約80名ほどの従業員を抱え、約$20.8ミリオンの資金調達に成功した。キャスパーマットレス、Toms、AceHardwareなどの大手の小売り業者を中心に100社以上の顧客を抱え、ウェアハウスプロバイダーの巨大なネットワーク、そして大量の在庫データという貴重な資産を持つ。

2. 事業内容とビジネスモデル

 

概要

倉庫の空きスペースや箱詰めに関わる人員が欲しいビジネスオーナー、小売業者、eコマースサイト運営者と、倉庫を持っているが使っていない部分を貸し出したいDHLなどの物流受託業者とをマッチングさせるサイトを運営している。24時間365日、どこの倉庫が空いてるのかという情報を入手でき、世界中のウェアハウスの透明性を提供している。サイトでは1000以上ものウェアハウス提供者の倉庫の空き状況を見ることができる。

また、倉庫の提供者側は、フレクゼのプラットフォームを利用することでその日の注文がどれくらい入っていて、どれくらいの注文の配送準備が完了しているか、という在庫管理を正確なデータをベースに知ることができる。その在庫レベルのデータは毎日データべースに更新されていくので一年を通してどこの倉庫の在庫レベルが何月に高いなどという具体的な詳細な数字をもとに経営戦略を練ることが可能になる。さらにそのデータを利用してどの商品、またはどの地域の倉庫の需要が高いなどというトレンドが把握でき、今後のウェアハウスの貸し出し戦略の市場予測なども可能になる。具体的なサービス内容は以下の通りである。

イーコマースフルフィルメント

E-commerce fulfillment service (イーコマースフルフィルメントサービス)を提供している(以下EFS)。EFSとはオンライン販売における様々な商品の受注、梱包、発送、在庫管理、決済管理など配送業に関わるすべてを代行して担うサービスのことである。世界中のウエアハウスの在庫レベルが分かる一貫したフレクゼ独自のプラットフォームでの在庫管理による利用者の迅速化、効率化を提供。

 

小売業者向け補充在庫の保管

食品、お酒、家具、自動車関連部品など様々なものを店舗販売する小売業者のために在庫保管場所を提供している。その小売業者の店舗が展開している地域や都市に一番近いウェアハウス提供者と商品サイズや数などを考慮してマッチングさせ、商品をそのウェアハウスに発送する。現在の在庫数などのリアルタイムでのデータはフレクゼのサイト内のプラットフォームでみることができる。在庫補充が必要な時にいつでも店舗に発送準備ができる。小売業者は丸ごと一つの倉庫を借りなくてすみ、またウェアハウス購入という非常にコスト高で、リスク高な投資をせずに済む。

 

短期間ストレージ拡張用倉庫

販売店舗がない地域にクリスマスシーズンなど期間限定で商品販売をしたいというある一定の短期間だけに特化した倉庫を提供している。靴ブランドのトムズは年末商戦にむけての繁忙期に、期間限定の店舗を、これまで販売網がなかった地域にも販売を拡大したいというニーズを満たすためにフレクゼを利用した例がある。

 

在庫分析、レポート

在庫管理に関連した日々のデータをもとに、フレクゼの分析チームが企業やビジネスオーナーの需要をもとに在庫、経営戦略の手助けをする。サービス利用者(倉庫利用者)の在庫データから在庫分析を行っており、配達地域、商品数、商品の大きさ、日々の注文状況、配達状況、在庫状況などから将来の地域別の在庫数の推移を予測でき、スムーズに在庫コントロールが可能になり欠品などを減らすことにつながる。

 

ビジネスモデル

1. 月額5000ドルのフレクゼが提供する機能の利用最低料

2. フレクゼが提携しているウェアハウスプロバイダーの利用数に応じたフルフィルメントサービスのパッケージ料金。スターター、グロース、エンタープライズ向けと3つに料金表が分かれている。スターターとグロース向けは一つの注文ごとに2ドルで、注文数の最低下限がスターター向けは2000オーダー以上、グロース向けは7500オーダー以上と決まっている。この料金には在庫データ分析や梱包料金などが含まれている。

3. 個々の注文ごとの梱包、発送準備作業の料金。化粧品などの小物、衣服やシューズなどの中型サイズのモノ、家具や自転車などの大型サイズのモノで料金が分かれている。4. 倉庫の中で在庫マネジメントをするパレット(物流用の台)ごとのスタッフ料金(人件費)

5. 全ての商品の月額保管料金10.65ドル(サイズに関わらずすべて統一料金)

6. 新しい在庫、商品の受け取り料金。一つのユニット(商品)ごとに0.8ドル。

 

3. 主要顧客や顧客特性

 主要な顧客としては、Eコマースサイト企業、小売業者、サードパーティーロジスティクスなどが利用している。特に在庫管理のプラットフォームを独自で持っていない、またはそれにかかる費用を節約したいという企業やビジネスオーナーの利用が多い。また、1000以上ものウェアハウスプロバイダーの中の約8割は、大手やローカルのサードパーティーロジスティクスである。

 

Eコマースサイト、ライドシェアサービス

 

Shopify

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誰でもサイト上で簡単にオンラインストアビジネスを始めることができるサービスを運営している。まず自分が売りたい商品を探すことから始めることができ、自分のブランドやロゴを簡単に作れる。ビジネスをした事のない人が梱包や配送、在庫管理のことを考えずに済むようにShopifyがFlexeのウェアハウスネットワークを利用し、顧客(ビジネスオーナー)の在庫管理を外注している。オンラインで世界中にあるウェアハウスネットワークを使えるのでどこへでも、そして誰にでも商品を販売することが可能になる。

 

Feather

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キャスパーやジョイバード、ウエストエルムなどの家具小売り業者と提携して新品もしくは中古の家具を必要な期間だけ貸し出すオンデマンド型サービスを行っている。借りた家具が気に入れば購入することも可能である。特徴としては、インテリアのテイストが同じベッド、ランプ、机、棚、テーブルなどをパッケージで借りることができ、すでにトータルコーディネートされた家具類をすぐに選ぶことができる。これにより、個別に家具を探す手間が省け、引っ越しなどの忙しく時間がない時には重宝するサービスを提供している。顧客特性としては、家具の大型商品なのにも関わらず、無料での1時間配送や3時間配送を行っており、Flexeのウェアハウスネットワークを利用しなければ行えないサービスとなっている。

Lull

 

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いい眠りを人々に提供することで人々を幸せにすることをコンセプトに、マットレス、枕、シーツ、毛布、ベッドフレームなどオンライン上で販売している。購入した商品の配送はFedExを通して行われ、無料で1-4日で消費者のもとに届く仕組みになっている。特性として商品サイズが大きく在庫管理する際の保管コストが他業種よりも多くかかる。Flexeを利用するメリットとしては、月額によるパッケージ料金で在庫管理コストを安く済ませられることとより消費者に近いウェアハウスからの発送により、できるだけFedExの配達コストと配達にかかる時間を同時に下げることができる。

 

Lime

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電動スクーター、電動自転車、車のシェアリングサービスを行っている。専用アプリで簡単にスクーターや自転車の現在位置が分かり、バーコードでスキャンするだけで決済が完了し乗ることができる。簡単に言うとUberなどのライドシェアのスクーター、自転車版である。目的地に到着したら、道路沿いや歩道の邪魔にならないところに乗り捨てることが可能である。大学内の移動でも利用が可能で安価で学生にもとても評判がいい。顧客特性はアメリカ、ヨーロッパの主要都市部や地域に自転車やスクーターという大型サイズの商品の在庫保管にフレクゼを利用している。

 

店舗、オンライン販売小売業者

 Mohawk

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カーペット、ウッドフローリング、タイルカーペット、ラグなどの床に敷くインテリア家具用品の専門販売を行っている。およそ14種類のカラーから選べ、質感などのテクスチャーも購入時に選択できる。さらにペットフレンドリー用のカーペットなども販売しており、自分の部屋に合った自分好みのカーペットを追及できる。顧客特性として大型商品のオンライン販売と店舗販売。



TOMS

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男性、女性、子供用向けのスニーカーやブーツを主にオンラインと店舗で販売しており、サングラスやコーヒー豆、バッグなども販売している。配送業者はUPSに委託しており、有料配送が基本で、最短で1から2日での配達が可能になっている。顧客特性としてはバッグ、シューズなどといった中型から小物の在庫保管が中心である。

 

Ace Hardware(エースハードウェア)

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アウトドア家具、工具、BBQグリルマシーン、芝刈り機などさまざなハードウェアを店舗とオンライン上で販売している。地球上で最も優れていて、顧客に親切なハードウェアストアになることを目指している。90年以上もの続く事業と7800人の従業員をかかえ、5000以上もの店舗を構えている。フレクゼとの提携の成功例として2018年に起きたハリケーンマイケルとハリケーンフローレンスの甚大な被害により不足した発電機やプロパンタンクの迅速な供給があげられる。フレクゼのウェアハウスネットワークを利用し、南カロリーナやフロリダ地域を中心に不足している大型で保管にスペースが必要な商品の在庫管理、迅速な発送に成功した。フレクゼを利用することで想定外の災害による需要にも対応できたことでオンデマンド型ウェアハウスサービスの優位性が証明された。

 

ウェアハウスプロバイダー、サードパーティーロジスティクス

 

Geodis

 

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SNFC(フランスの国鉄グループ)が親会社で主にフランス、ヨーロッパ、アメリカ、アラスカなどを中心に輸送業を展開する。67か国に拠点があり、120か国にまたがる巨大なサプライチェーンネットワークの重役を担っている。ヨーロッパでは配送業において4番目の大手であり1日から2日で荷物を届けることができ、配達スピードに関してはヨーロッパで1位である。顧客特性としては大手のウェアハウスプロバイダーで、トータルで世界中に300ほどの倉庫拠点を所持しており、その倉庫面積は約70ミリオンスクエアフィートとなっている。

 

Iron Mountain

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ボストンのマサチューセッツに本拠地を持ち、全米、そして世界中に1400の拠点を展開するアメリカの情報マネジメントサービス会社である。大量のデータを保管し記録するために巨大なデータセンターを持っており、そのための倉庫を所持している。ビジネスの一部としてその倉庫をストレージビジネスとして貸し出している。

 

4. 事業の特徴、他事業との差別化

 

オンデマンド型サービス

事業の特徴としては、まずオンデマンドであるということである。UberやAir bnbといった、タクシーやホテルが ”今まさに必要だ” という時にその需要を満たしてくれる、といったサービスを提供するのがオンデマンドの最大の魅力であり武器である。フレクゼで実際にあった例として、シアトルに本拠を置くワインのホールセラー(卸売り会社)が、ワインの需要が増加する連休シーズンに向けて在庫を増やそうと倉庫を探していたが見つからず困っていた時に、フレクサのオンデマンド倉庫マッチングサービスを利用することで増加した在庫を店舗のより近くで保存する場所を簡単に見つけることができ、さらに、前もって見込んでいた17万ドルの余分な費用を節約することに成功した。この成功例はまさにフレクサのオンデマンドサービスの真骨頂といえる。

 

配送委託業

フレクゼは配送委託業もかねてサービスを提供しており、配送時にそれぞれの企業のブランドや配送ポリシーなどに沿った配達を推新している。世界中にあるウエアハウスからの配送が可能になるため配達場所にできるだけ近い倉庫から配達ができ、配達コストも下がり、かつ配達時間も短縮できるというのが魅力である。下がった配達コストや配達時間短縮は結果的に顧客により安いサービスを提供できたり、カスタマーエクスペリエンスの向上につながることでサービス利用者の拡大が図れる。

 

全てをこなす統一のプラットフォーム

在庫、注文管理、配送状況、決済管理まで配達の一環のすべてをフレクゼのプラットフォーム一つで管理でき、eコマースサイト運営者などの商品が非常に多く管理が難しい業態でも簡単に管理が可能になる。

 

アマゾンとの差別化

フレクゼはアメリカだけで300以上のウエアハウス、カナダなどを含め世界中に1000以上のウェアハウス提供者と提携している。また1000万スクエアフィート(0.92キロメートルスクエア)以上の範囲の倉庫面積という広範囲のネットワークを形成しているフレクゼは、アマゾンが莫大な投資をかけて築き上げた150以上のウェアハウスよりも圧倒的に数が多く、しかもほぼ設備投資なしでそのネットワークを築いた。またアマゾンはFBA料金と呼ばれる在庫保管に対する保管料を利用者から徴収し収益源としているが、フレクゼを利用するとFBA料金と比べて最大で約80%程度節約できる。また、配送がアマゾンプライムよりも早い。注文を受けて次の日には商品が届く翌日配送を推進しており、アマゾンのプライム会員が利用できる翌々日配送(2日後配送)に引けを取らない。また、アマゾンで出品すると小売業者やビジネスオーナーからすれば、個々の自社のブランドがアピールしにくいが、フレクゼを利用すれば、自社サイトを通じて注文を受けられるので顧客と直接的な関係を維持できるという利点がある。

 

5. 競合分析

 

Flowspace

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2017年5月に設立され、全米にウェアハウスのネットワークを持つ。サービスとしては、ウェアハウスの貸し出しサービス、イーコマースフルフィルメント、小売業者向けフルフィルメント、輸送業全般を行っている。輸送業ではBtoB、Btoc間のどちらも受託している。また、WMSと呼ばれるクラウドベースのウェアハウス管理システムのプラットフォームも提供している。ウェアハウスは月単位で借りることができ、最低の貸し出し下限スペースはなく、小さいスペースも簡単に借りられる。ビジネスの特性としてはオンデマンド型ウェアハウス貸し出しサービスで、フレクゼとほぼ同じようなサービスを提供している。

 

Stord

 

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アトランタを拠点として長期期間の契約を必要としないオンデマンド型ウェアハウス貸し出しサービスを提供している。Stordの在庫管理プラットフォームでは簡単に在庫レベルが把握でき、かつどこのウェアハウスにどの商品がどれぐらいあるのかというのが一瞬で分かる。メール管理、注文管理、電話番号管理などすべてをクラウドプラットフォーム上で処理でき、平均で従業員一人あたり約25分ほど時間節約が可能になる。2日以内の配達を推進している。

Ware2go

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ウェアハウスプロバイダーとウェアハウス需要者をつなぐマッチングサイト、リアルタイムの在庫や注文データ管理、無料で利用できる在庫レベル分析データや統計、使いやすいプラットフォームなどが特徴である。ウェアハウスプロバイダーにとっては、手間がかかる決済管理も必要なく、インボイスを自動で送ってもらえる。また無料でStordのオンラインクラウドプラットフォームを利用でき、倉庫の貸し出し管理が簡単になる。ウェアハウス利用者にとってはミニマムチャージ(最低料金)がなく、最小単位のスペースから借りることが可能で、長期間契約の必要もない。2日後配達を保証しており、UPSと提携している。サービス内容としてはフレクゼとほぼ同じである。

SpareFoot(スペアフット)

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個人向けにストレージ倉庫貸し出しサービス、車の駐車スペース貸し出しサービス、引っ越し時のトラック手配などを行っている。ストレージ貸し出しサービスでは、梱包、倉庫への配送、保管管理、使用時の利用者の家への配達など、顧客は何もせずとも所有物をストレスなく管理できる。車の駐車スペース貸し出しサービスでは、個人向けに屋外での屋根なしもしくは屋根付きスペースや屋内でのスペース、または自動車販売会社向けの駐車スペースの提供など大規模に行っている。約1万以上の倉庫のネットワークを持っている。競合カテゴリーとしてはオンデマンドの個人向け倉庫の貸し出しサービスであり、フレクゼとはウェアハウス貸し出しという点では同じであるが、サービス対象やそのサービスに必要な倉庫面積、もしくはスペースタイプ(倉庫ではなく駐車場)などが異なる。

 

その他の競合となりうる企業

Storemate

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個人向けにセルフストレージの貸し出しマッチング事業を展開している。C toC の個人向けに安く借りれるのが特徴なので、小売り業者やイーコマース運営者向けのBtoC、BtoBではない。

Austin tenant advisors  

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オースティン地域に特化した、オフィススペースや倉庫の貸し出しを行っている。ウェアハウスマッチングサイトというよりは物流不動産紹介業に近いと考えられる。

 

6.  成功要因

 

なぜフレクゼのビジネスは短期間で急拡大し、売り上げ高を2014年から2017年の間に約70倍にまで伸ばすことができたのだろうか。そして、どのようにして短期間で1000以上ものウェアハウスプロバイダーのネットワークを構築することができたか。この売り上げ高の急激な成長要因はウェアハウスの需要の拡大によるフレクゼのサービス利用者の増加があげられる。次にウェアハウスの賃貸料の上昇により、倉庫一つを丸ごと借りるよりも倉庫内を小分けにしてスペース単位で”その時に必要な分だけ借りる”というオンデマンド型サービス需要の増加である。また、巨大なネットワーク構築の成功要因としてこれまでのウェアハウス利用における非効率性があげられる。その他の要因としては、Eコマース市場の拡大、近年の配達スピードの短縮傾向、配達コストの低下などがあげられる。



ウェアハウス需要の拡大

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まず成功要因としては、近年のアメリカにおけるウェアハウス(倉庫)需要の拡大があげられる。その理由は、毎月発表されるアメリカの雇用統計では歴史的に見ても低い失業率を維持しており、アメリカ国内の消費も順調でアメリカ経済は現在成長の一途をたどっている。その中で、アマゾンなどのECサイトの普及により、爆発的にオンライン上での消費が増え、その商品を保管するウェアハウス需要が劇的に拡大しているというのが理由である。左の図の棒グラフは2010年から2018年のウェアハウス需要と供給の差の推移を表しており、 ゼロよりも上で推移していれば需要が供給を上回っているという意味である。グラフを見てみると、この10年の間ほぼすべての年で需要が供給を上回っていることが分かる。また、2016年をピークに需要と供給の差は減少しているが、2017年の後半からまたその差が開き始めており、ウェアハウス需要の底堅さがうかがえる。さらに、緑の折れ線グラフはVacancy Rate(ベイキャンシーレート)とよばれ、これは今現在あるものと建設中のものもすべて含めたアメリカ中のウェアハウスの数から、今すでに利用されているウェアハウスの数を引いて、どれくらい空きスペースのあるウェアハウスがあるのかという割合を示した数字の推移である。ベイキャンシーレートが低くなれば低くなるほどウェアハウスの需要が高まっていて倉庫の空きスペースがないという状況を指している。グラフを見ると2010年以降毎年ベイキャンシーレートは下降し続けており、直近のレートは4.9%と過去最低を記録している。この10年間アメリカにおけるウェアハウスの需要は常に高く、アメリカ中の倉庫の空きスペースがどんどんなくなっていることが分かる。

Colliersが提供しているアメリカのマーケットリポートによると、2018年の第3四半期において203.6ミリオンスクエアフィート(約18.91kmスクエア)面積がウェアハウスに使われており、これは2017年に比べて11.3%も高くなっている。ウェアハウスの需要は今現在かなり高く、今後もアメリカ経済の成長ととも拡大していく見通しである。

 

ウェアハウス賃貸料の上昇

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ウェアハウスの需要の拡大に伴って、ウェアハウスの賃貸料が上昇している。下の図はアメリカの地域別に見た2015年から2018年のウェアハウスの賃貸料を示したものである。アメリカ全土でのスクエアフィート当たりの平均賃貸料は3年前と比べて上昇傾向であることが分かる。また、特にロサンゼルス、ニュージャージー、インランドエンパイア(カリフォルニア南部)などの地域では特にその上昇推移が急になっており、ウェアハウスの需要が高いことが分かる。

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次にロサンゼルス地域にフォーカスしてみるとその賃貸料の上昇はかなり異常であることが分かる。上の図はウェアハウス需要がアメリカの中でも比較的高いロサンゼルス地域の2017年から2018年におけるウェアハウスの賃貸料の推移を示している。上記で説明した2017年の需要拡大とともにわずか1年でスクエアフィートあたり約9.1ドルから10.1ドルと短期間で約1ドルも上昇している。

 

オンデマンド型サービスの需要増加

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オンデマンド型サービスはAirbnbやUber、Lime、zipcarなどの企業が提供しているサービスであり、消費者が欲しい時にいつでもどこでも消費できるという特徴を持つサービスである。またそのオンデマンド型サービス市場経済のことをシェアリングエコノミー、アクセスエコノミー、オンデマンドエコノミーなどといい、近年では多くの人々にその言葉が定着しつつある。ハーバードビジネスレポートによるとアメリカでは現在約2250万人以上の人々がオンデマンドサービスを利用しており、トータルで約$57ビリオン以上ものお金が使われている。下図はアメリカのシェアリングエコノミーの将来の市場予測のグラフであり、2013年にはわずか$14ビリオンであったオンデマンドエコノミーだが、その市場規模は2025年までに$335ビリオンまでに膨れ上がる見通しである。

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不十分で非効率なウェアハウス利用

フレクゼ設立者のカールは既存のウェアハウスの利用はかなり非効率で、もっと空いたスペースを有効に活用することを目的としてフレクゼを創業した。カールによると20%から30%のウェアハウスはその収容可能面積もしくは体積を十分に利用できていないと語っている。CBREのレポートによると、アメリカでは19.1ビリオンスクエアフィートの面積がウェアハウスに使われていることから計算すると、3.8から5.7ビリオンスクエアフィートという非常に広範囲な領域が、まだ十分に利用されていないと予測できる。これは見方を変えると、これからのオンデマンド型ウェアハウスサービスの成長ポテンシャルを表している。

 

配達スピードと配送料が鍵

近年アマゾンのプライム会員などでの無料2日配達などの普及で、消費者が配達スピードをより重視している。Colliersのレポートによると、3日程度で商品が’届くのが早いと感じるかという質問に5割程度が早いと感じていたが、2017年以降は約3割程度の人しか早いと感じていない。つまり、2日以内の配達が今後当たり前になり、しかも配達コストも下げなければ他社の無料配送に勝てないという問題にイーコマースサイト運営者、小売業者、輸送業者は直面している。フレクゼを利用することで、在庫管理、梱包、発送とすべての配送の流れにおいてコストが削減できるメリットがあり、また配達スピードも速いため、これらの状況がフレクゼの利用者を加速させた要因の一つであると考えられる。

 

米国イーコマース市場の拡大

 

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 近年アマゾンをはじめ、ウォルマート、ターゲット、ホームデポ、ベストバイなど小売り大手もオンラインでの販売を促進している。上図の棒グラフはイーコマース市場の全体の売上高を示しており、2023年には$735ビリオンと着実に成長していることが分かる。また下の折れ線グラフは全商取引金額におけるイーコマースでの取引金額の割合を示しており、2018年には約10%と2010年の4%程度と比べても驚異的に成長している。イーコマース市場が拡大したことにより、全米、もしくは世界中の消費者に商品を最速で届けるためにより消費者の居住地に近い場所で在庫を保管するというニーズが高まったことがオンデマンドウェアハウス需要の拡大につながったことがあげられる。

7. 日本における類似ビジネスモデル

 

Souco

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2016年7月に設立され、物流マッチング事業を展開している。倉庫の空きスペース提供したい企業とそれを使用して在庫など管理をしたい企業とをマッチングさせるサービスを提供している。クリスマスや年末商戦だけ使用したいなど期間限定のニーズでも、最小50坪、1か月単位で最短1日から借りられる。米国の不動産物流会社であるプロロジスと提携しており、プロロジスが持つ倉庫ネットワークを使い、倉庫提供者を増やしている。普通倉庫の貸し出しが主で冷凍、冷蔵庫のある倉庫は基本的には提供していない。料金に関しては倉庫提供者が提示する金額の2割が転貸手数料としての収入になっている。基本的に倉庫マッチング事業および倉庫の転貸事業が主であり、フレクゼのようにイーコマースや小売業者向けにフルフィルメント事業をやっておらず、梱包、発送などの作業は行っていない。現在はグローバル・ロジスティック・プロパティーズ株式会社、および大和ハウスエ業株式会社も新たに提携し、倉庫総面積が3万500坪以上となっている。

イーソーコ

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倉庫やテナントの物流不動産検索サイトである。全国の倉庫やテナントの貸し出し行っている企業をサイトで検索でき、ニーズに合ったサイズ、期間で借りることが可能。基本的に倉庫の貸し出しの検索ポータルサイトのみの運営でフルフィルメントサービスなどは行っていない。

 

Minikura

 

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MinikuraはCtoC向けに個人の荷物倉庫スペースの貸し出しサービスを行っており、200円という少額から荷物を預けらるのが特徴である。箱単位で荷物を預けられ、アイテムごとにサイトやアプリで簡単に管理ができる。また預けているアイテムをヤフーオークションに出品できたりでき、とても画期的である。ポジショニングとしてはセルフストレージ貸し出しサービスであり、BtoB向けではない。