長期投資研究ブログ~50年後の未来~

米国、日本株の注目企業分析、新テクノロジー分野の市場分析

今年の半導体はどうなる?半導体市場を分析してみた。

目次

  1. 世界の半導体需要
  2. 世界の半導体供給
  3. 半導体の在庫
  4. 日本の半導体需要
  5. 今後の半導体市場

 1. 世界の半導体需要 

demand in Billion

2014

2019

demand growth

computing

105.4

107.2

1.71%

wireless

91.9

107.8

17.30%

consumer

53.9

61.4

13.91%

automotive

25.8

41.3

60.08%

industrial

32.1

42.9

33.64%

wired communication

25.6

29

13.28%

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世界の半導体需要を製品ごとに分けてみると、コンピューターの計算処理に使われるものとワイアレス機器に使われる半導体が出荷額では最も多く、2019年時点で約$107ビリオンと、他の製品用途の半導体と比べると圧倒的に多くなっている。それに次いで電子レンジやビデオレコーダー、ゲームなどに使われる消費者用向け半導体が$61.4ビリオン、自動車に使われるものが$41.8ビリオンとなっている。5年前との需要成長率を比べてみると、自動車用の半導体が非常に伸びており、約60%の需要増となっている。 また、工場での熱や電流管理、センサーなどに使われる産業用向け半導体の需要成長率が33.64%とこちらも順調に成長していることがうかがえる。注目点としては、半導体製造素子の製造過程に欠かせない円盤状の半導体基盤である”半導体ウエハ”の需要が、電子メディアとスマートデバイスの需要増加により増大しており、半導体ウエハの需要は2024年には$40ビリオン以上となり、2018年から2023年までのそれぞれの年間成長率は7%になる見通しで、堅調に推移することが予想される。その中でも様々な用途に使われる直径300mmのウエハ需要の増加が特徴的である。ウエハは円盤の直径の大きさによって半導体としての効率性や生産性が変化し、直径が大きいほど効率性がよくなる。世界全体で見ると、世界半導体統計によれば、半導体全体の市場は2018年の$478ビリオンから2019年には$490ビリオンに成長する予定である。半導体の種類ごとの年間成長率を見ると、メモリー用半導体が33.2%、単純機能半導体(ディスクリート)が11.7%、オプトエレクトロニクスが11.2%となっており、メモリー用半導体の需要が比較的伸びていることがわかる。



  1. 世界の半導体供給

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世界最大の半導体供給を誇るのは、韓国サムスン電子である。次いでインテル、SK Hynix, Micron technology(マイクロンテクノロジー、Broadcom(ブロードコム、クアルコムと続く。特に顕著なのは韓国勢のシェアの急拡大である。SK Hynixは2008年時点では、ほとんどシェアがない状態であったが、2018年時点で世界3位に躍り出ている。

 

世界の半導体供給は2017年度から2018年度で比べると、サムスン電子が売り上げ面で1位の座に輝いており、2018年第三四半期時点で$19ビリオンとなっている。また、売上高の年間成長率は27.1%でトップ10の中では3番目に高い成長率となっている。一番成長率が高いのが韓国のメモリー用半導体サプライヤーであるSK Hynixの42.7%である。アメリカのMicron technologyも31.1%と世界第2位の成長率である。世界のトップ10の売上高年間成長率の平均は、20.7%でありそれ以外の平均である5.4% と比べるとかなり高く市場全体の平均をトップ10の半導体会社が引き上げている。しかし、2019年を含む今後の半導体サプライヤーの売り上げ成長は鈍化する見通しが立っている。世界半導体統計の報告によると、メモリー用チップの価格の下落、そして半導体在庫の世界的な供給多過により、データセンターのサーバー用の半導体や自動車用半導体の需要の伸びが鈍化すると予測されている。AIやIOTによる半導体需要の加速が引き金となるのは、もう少し先のタイミングになる可能性がある。

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  1. 半導体の在庫

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世界の半導体の在庫は2017年5月から全体的に増加気味であり、有名な電子機器製品サプライヤーであるHPEやDELL、Lenovoなどといった半導体の顧客側(買う側)のデータセンターのサーバー用のDRAM(メモリー半導体)の在庫が増加している。これにより、メモリー半導体価格の下落が予想される。具体的な数値の予測としては、2019年の第一四半期の半導体平均価格は前期と比べて28%程度下落する見通しである。



上記のグラフが示すとおり、韓国のサムスン電子やSK Hynix, アメリカのMicronTechnologyなどの半導体の供給側(売る側)の在庫も年々増加傾向にあり、特に2018年後半からの増加が顕著であることがわかる。半導体価格も2018年の第三四半期を発端として、$300USDから$200USDを切るところまで急激に下落している。

4.日本の半導体需要

下図のを参照してもらうとわかるが、日本の半導体需要は減少傾向である。2003年時点では21.4%程度の需要のマーケットシェアがあったが、現在では5.4%となっている。反対に、中国の消費量のマーケットシェアは2003年時点と比べて約3倍以上になっており、年々増加している。

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5.今後の半導体市場

米中貿易摩擦の影響により中国の半導体需要が衰えてきているが、実際これは日本にとっては好機とも言える。中国の大半の半導体は米国からの輸入に頼っており、米国の半導体輸出制限により中国は日本や香港などから輸入する必要になってくる。これはいわゆる特需と言える状況になる可能性が極めて高い。GAFAによるデータセンターの投資抑制により、メモリー用半導体の需要が鈍化しているが、5G向け、そして4Kコンテンツ用の半導体需要の増加により2019年の後半には半導体市場は上向きになる見通しである。今後の半導体の需要増加の発端としては、IOTの推進、またはデータセンターの低消費電力の需要増加が要因となる可能性が高い。